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Q1 角膜潰瘍の疼痛管理にNSAIDsの内服は効きますか? 点眼と違って,角膜上皮の再生を抑制することはありますか?

A1
角膜潰瘍の疼痛管理にはNSAIDsの内服を使用してください。効果はあります。
基本的に内服薬は角膜組織中に移行しないので,上皮再生に影響はありません。
潰瘍が重症で前房蓄膿などを認める場合は,抗菌薬の全身投与もあわせて行うとよいと思います。
キノロン系であれば確実に眼内に移行します。プレドニゾロンは角膜への血管新生を抑えてしまうので,プレドニゾロンの内服はやめてください。
ただし,免疫介在性疾患の場合は除きます。

Q2 角膜潰瘍が治ったあとに角膜に軽度の瘢痕が残った場合,(瘢痕を消すために)ステロイド薬は使いますか?

A2
治療方法によります。
点眼薬だけで潰瘍治療を行った場合には,残った混濁に対してステロイド薬は使用しません。
結膜フラップ術を行った場合は,術後の瘢痕を軽減させるために使用します。
角膜潰瘍の混濁は,角膜実質のコラーゲン線維の走行が崩れてしまうことで起こっているので,
ステロイド点眼で線維の走行を治癒することはできません。
しかし,手術による浮腫や瘢痕による混濁は,ステロイドで軽減されるので使用します。

下に写真で実例を挙げておきます。外傷による角膜融解の症例で,結膜フラップ術を行いました。
術後の瘢痕はステロイド点眼により消失しましたが,
角膜のコラーゲン線維の走行が壊れているところは,点眼を使用しても混濁が残っています。
角膜融解
角膜全周の結膜フラップ術後
2カ月後

フラップを除去

フラップ除去から1週間後

この時点でステロイド点眼を開始

ステロイド点眼開始から1カ月後

その後は混濁に変化がないのでステロイド点眼は中止

Q3

虹彩萎縮の症例は,縮瞳ができないため強い光に弱いということはありますか? 強い光をたくさん浴びることで網膜障害が生じることはありますか? 飼い主さんに,晴れた日に日中に散歩に行かないように,などのアドバイスはされますか?

A3
瞳孔括約筋の断裂で縮瞳がうまくできない症例は,直射日光をかなりまぶしがります。
視覚障害が起こるほど,網膜は影響を受けないと思いますが,
なるべく日陰を選んだほうが動物の苦痛は少ないと思います。飼い主さんには以上のようにお話ししています。
Q4

猫では,手術(眼球摘出術)のときに眼球を引っ張ると,視神経が引っ張られて反対側が見えなくなるといわれていますが,実際にあることなのでしょうか? また,犬では神経に余裕があるため引っ張ってもかまわないといわれていますが,これも実際はどうなのでしょうか?

A4
犬も猫も,眼球摘出の際は迷走神経刺激が働くので,強く引っ張ることは避けたほうがよいと思います。
なかなか摘出しにくい症例で強めに引っ張ると,心拍数が低下することがあります。
反対眼が視覚喪失に陥ることは,私は経験がありませんが,論文では報告されています。
Q5
 

少し大きな眼瞼腫瘍を切除するとき,眼瞼スライド法を行うと,部分的にマイボーム腺がない領域ができてしまうため乾性角結膜炎(KCS)になりやすいでしょうか? 眼瞼裂が少し小さくなっても,くさび型切除法を行うほうがよいですか?

A5
眼瞼腫瘍の切除は,眼瞼の長さの1/3までの大きさであれば,くさび形で切除する方法で対応できます。
しばらくの間は眼が小さく見えますが,少しずつ眼瞼の皮膚が伸びてきて,同じ大きさになります。
1/3以上の場合は,スライド法がよいと思います。

マイボーム腺がない領域ができるだけでは,KCSにはなりません。
KCSは涙液の分泌量が減少する疾患で,マイボーム腺は涙液が蒸発しないように涙の油成分を分泌する器官ですので,
涙液層に多少の影響は出ると思いますが,KCSになるほどの影響は出ません。