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03 吉田 大祐

「有限会社ファニーテール」の代表兼トリマー。
26歳の時に他業種からトリミング業界に転身。それまでに培ってきた経営ノウハウを活かして、自身のサロンをマルチーズの飼い主さんから絶大な支持を受ける人気店へと成長させる。また、マルチーズを極めるため、トリミングだけでなく、ブリーディングをしてハンドラ―としてドッグショーへ積極的に参加。近年は、マルチーズのトリミングセミナーや、サロン経営セミナーで講師を務めるなど幅広く活躍している。

トリマーになるまで他業種で働かれていたそうですが、その経歴を教えてください。

大学卒業後に、教育系の出版社に営業職で入社し、訪問販売をおこなっていました。しかし、その仕事内容が合わず3カ月ほどで退職。その後、地元のパチンコ店でアルバイトを始めました。
そのパチンコ店は接客サービスを売りにしていたので、接客の基本から細かい仕草に至るまで、「お客さんを喜ばせる接客術」を徹底的にたたき込まれました。仕事は辛いことが多かったのですが、職場のスタッフが同世代でとても楽しく給料も良かったため(笑)、毎日必死に働きました。その甲斐あって、2年後には店長に、さらにその1年後には本社の営業部に配属されました。
本社の営業部に配属されてからは、現場を離れて店舗ディレクターとして管轄店舗を巡回しながら、「売り上げをいかにあげるか」ということに心血を注いでいました。この時、店舗経営やスタッフ指導を学んだことが、「ファニーテール」の運営や講師をしている経営セミナーなどに活きていると思います。

順調にキャリアを積み重ねられていた前職を辞めたのはなぜですか?

店舗の売り上げ管理は、プレッシャーがつきものです。朝出社してから退社するまで、常に上長からプレッシャーをかけられていました。休日出勤は当たり前で、睡眠時間は3時間にも満たないという状況に追い込まれた結果、精神的な負担が大きくなり、心身に支障をきたしてしまいました。精神的に働くのが困難になってしまったので退職し、自宅での療養生活を始めました。
退職して2カ月くらいたった頃、大阪に住んでいた婚約者が結婚の準備のため、私のアパートで一緒に生活することになったのですが、私は自分の状況を隠していたので、彼女は来て驚いていました(笑)。

トリミング業界に転身したきっかけは?

実は、彼女が大阪でトリミングスクールを卒業しており、私と一緒に暮らすタイミングでトリマーとして働き出しました。一方、私はまだ働くことに対して抵抗があり、家に引きこもる生活を続けていました。そんな私の状況を見かねた彼女の勤め先のオーナーが、「送迎でもやってみないか?」と声をかけてくれました。「送迎ならできるかな」と思い、働き出す決意をしました。実際に働いてみて、毎日犬と触れ合うことがとても楽しく、いつしか精神的な安定を取り戻していました。
そんな矢先に、オーナーから「店を引き継いでくれないか」と突然告げられました。考えてもみなかったことなので、非常に迷ったのですが、「これをチャンスに変えよう」と思い、銀行の融資を受けてそのお店を買い取りました。

その後、どのように人気店へと成長させたのですか?

ひょんなことからトリミングサロンのオーナーになったのですが、「やってやろう」という強い気持ちで、遮二無二働きました。前職のパチンコ店で学んだ、接客サービスと経営術をすべてつぎ込んだ結果、売り上げは右肩上がりに伸び、さらに折しものペットブームが追い風となり、3年で繁盛店に成長できました。
それと同時に、お店が手狭になってきたので、店舗拡大を考え始めた頃、近所のガソリンスタンドが閉店するとの話を聞いて、移転拡大を決心。個人事業主では到底、融資を受けられないような金額だったので、「有限会社ファニーテール」として法人設立し、銀行からの融資にこぎつけ、今の地に開業しました。

マルチーズのブリーディングやショーなど多方面で活躍されていますが、
トリミング技術はどのように習得されたのですか?

突然、夫婦二人で開業することになり、トリミングを基礎から学ぶ時間がなかったので、妻のトリミングを後ろから盗み見て、見様見真似で少しずつ覚えていきました。完全に独学なので、自分のシザーリングに自信を持てるようになるまで、時間がかかりました。

「せっかくトリミング業界にいるのなら、いずれかの犬種でNo.1と呼ばれるくらい有名になりたい」という野心があり、得意とするトリマーが比較的少ない、マルチーズを極めようと猛勉強。ブリーディングやハンドラ―についても勉強しました。お陰様で、「マルチーズのトリミングなら、ファニーテール」と言ってくださる飼い主さんが増え、業界内での認知度も向上してきたと思います。

「trim」や動画サイト「Groomers Channel」に期待することは何ですか。

私は、「ホンモノを追求すること」だと思っています。トリマーにおけるホンモノとは、スタンダードのカットスタイルを理解していることです。スタンダードのカットスタイルにはその犬種の魅力を引き出すテクニックが凝縮されています。それを知らずに、ペットカットのトリミング技術だけを極めようとしても、いつか行き詰ってしまうと思います。
私もマルチーズでNo.1になろうと決めてから、スタンダードを学ぶ一環としてブリーディングをして、ドッグショーにも参加しています。実際に、勉強したことで初めて分かったことがたくさんあります。
今はインターネットでいくらでも情報が得られる時代だからこそ、「trim」や「Groomers Channel」には、ホンモノの技術を紹介して欲しいですね。そして、ただ紹介するだけではなく、読者のやる気が出るような企画を期待したいです。

今後の目標を教えてください。

これまでの人生で様々な経験を積んできましたが、その中で得た教訓は、「思いの強さで人生は開ける」ということです。私は、トリミングだけでなく、色々なことに挑戦する新たなトリマー像を築き上げたいと考えています。トリミングと自分の好きなことを組み合わせて、オンリーワンを作っていく。そのための勉強も欠かさず、異業種のセミナーなどに積極的に参加して、情報収集しています。
今後は、海外展開も視野に入れつつ、個人的にはマルチーズ界のNo.1でいられるように、邁進していきたいと思っています。