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01 遠藤 彰子

「design f」チーフトリマー。
都内のペットショップでさまざまな犬種のトリミングの経験を積んだ後、常に予約がとりにくい、東京でも屈指の人気店「design f」に転職。
プードルだけでなく、とくにシュナウザーをかわいくするオリジナルのスタイルに定評があり、1頭1頭の個性に合わせて細かくアレンジをしている。

これまでの経歴や、「design f」で働くようになったきっかけを教えてください。

専門学校卒業後は、都内にあるペットショップでトリマーとして勤務しました。最初に努めたペットショップは、駒沢公園の近くにあってさまざまな犬種が来店したので、良い経験を積むことができました。
当時は、それまでになかった犬のカットスタイル集が発刊されはじめた頃で、まだデザインカットが少なかった時代でした。そんな中、購入したカットスタイル集に、「design f」のプードルとシュナウザーのスタイルが載っていて、パッと見て「なんてきれいなんだろう、スタイリッシュでおしゃれなんだろう」と思い、「design f」への転職を目指すようになりました。
その頃の「design f」は、5年以上のトリミング経験がないと就職できなかったのですが、知り合いのトリマーが「design f」で働いていたので、紹介をしてもらう形で特別に働くことができました。

実際に就職してどうでしたか?

働いていたトリマーたちのレベルが高すぎて緊張しました(笑)。それまでに働いていたお店が、いかに頭数をこなすかを目指していたのですが、「design f」では、1頭1頭の個性に合わせて丁寧にトリミングをしているので、シャンプーからすべて学び直しました。
当時は1頭の犬につき、ひとりのトリマーがすべてを担当していたので、そのコの性格やコンディションなどをすべて理解した上でトリミングをすることを心がけていました。
今は、アシスタントや別のトリマーがブローまでをすることもあるのですが、そのコの個性はきちんと伝えた上で行うようにしています。そこは、もっとも大切にしている部分ですね。

トリミングをする時に重要視していることは何ですか?

トリミングをする過程で、そのコの体調や体の異変は細かく見るように徹底していて、すべてお客様に伝えるようにしています。
カットでは、すでに退職された先輩たちが作り上げた「design f」のベースとなるスタイルは崩さないようにしながら、最近流行しているスタイルも加えてアレンジしています。
大まかに言うと、プードルは口がコンパクトで頭や耳にボリュームがあるスタイル、シュナウザーは眉毛やマズルも丸くして、やわらかい印象のスタイルが特徴だと思います。

こだわりを持ったお客様が多いので、たくさんお話をしながら、できるだけイメージしているスタイルに近づけようにしています。
また、私も「design f」で働いて11年目になるので、これまで担当してきたコたちが高齢になってきました。若い頃のようなスタイルにならなかったり、お手入れに困っているお客様も増えているので、お話をしながら「こういうスタイルにした方が、お手入れも楽ですよ」など、いろいろ提案をしています。

1頭1頭の個性に合わせてアレンジするのは難しいと思いますが、コツは何でしょうか?

お客様が希望されるスタイルにする場合、そのコの欠点はどこで、カバーするにはどうしたらよいか、常に考えながらトリミングをしています。
たとえば、写真などを持ってきて、同じようにしてほしいとリクエストされるお客様は、「おさない」印象のスタイルにしたい方が多い。そのコのマズルが長い場合は、おさない印象になりにくいので、マズルの長さが強調されないように作ります。
目が近いコは近づいて見えないように、目が離れているコは離れて見えないように、考えながら工夫をしています。

カットをする上で、参考にしていることや、勉強していることはありますか?

チーフになる前は、先輩たちのカットが好きだったので、その真似ばかりをしていました。最初は、真似をすることが大切だと思います。
先輩たちが退職されてからは、他のサロンのスタイルを見るようにしています。最近は、インスタグラムをかなりチェックしていて、たとえばシュナウザーは、頭や耳の毛を長くするコが増えているので、他のサロンでは、頭のどの位置から毛を伸ばしているのかなどを見ています。
プードルは、最近はとにかくインスタ映えするようなスタイルが流行っていて、お手入れが大変そうなものも多いように思います。そういったコたちは、インスタやブログを見ていても、登場する回数が多いので、サロンに来てお手入れしているターンも早いと思います。「design f」で似たようなスタイルをお願いされた場合は、やはりお手入れが大変なので、来店頻度を上げてもらえるように提案しています。

SNSの普及は、カットスタイルにもかなり影響を与えていると思います。インスタグラムを見ていると、カット直後に写真を撮った時はきれいでも、数日後にはガタガタということも多くあります。「design f」では、写真映えもするけど長い期間崩れない、そしてお手入れもしやすいスタイルにこだわっているので、そこは気を付けてトリミングをしています。

「trim」についての感想をお聞かせください。

私もキャリアの浅い頃は、とにかく上達したくて色々な本を読んでいました。
「trim」のバックナンバーを拝見したのですが、掲載されているトリマーとカットの仕方が違ったとしても、「なるほど」と思うことが多く掲載されていました。写真だけではわかりにくい部分を、イラストで解説しているのでわかりやすいです。
今回、特集の監修をして、自分のカットを写真で細かく1コマ1コマ見ていく中で、他のトリマーのカットがどうやって解説されているのか見てみたいと思いました。 動画も撮影していただいたのですが、私もたまにSNSなどにアップされているカットの動画を見ることもあります。
他のトリマーは、こういう風にシザーを動かしているんだとか、写真ではわからない立体的な動きがわかるので参考になると思います。